2022年10月に「政府が、国民年金の保険料納付期間を20歳から65歳までの45年間とする検討に入った」とニュースが報じられました。これ、多くの人が注目していますよね。もし、その通りになれば約100万円の負担増になるため、反対の声も多いそうです。定年退職を考えていたり、60歳が目の前だった方は気が気でないのではないでしょうか。
もし、この政府の案が現実のものになり、かつ、60歳で退職を選択した場合は、65歳になるまでの5年間、家計が非常に心配ですよね。年金が支給されないどころか、支払わなければなりません。政府は労働力不足の社会において、まだまだ元気な60歳に働いてほしいという狙いのようですが、果たして仕事をしているひとはどれくらいいるのでしょうか。
そこで、この記事では最新の調査をひもときつつ、60歳以上の就業実態や雇用形態、平均年収を明らかにしていきたいと思います。では、見ていきましょう!
60歳以上の就業率の実態
令和3年に総務省が発表した「労働力調査」によれば、男女あわせた60~64歳の就業率は71.5%、65~69歳は50.3%という結果です。非常に高い数値だと思いませんか?この数値は10年間ものあいだ着実に伸びています。以下の表では、ここ最近3年間の就業率の推移をまとめておきました。
60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75歳以上 | |
2021 | 71.5% | 50.3% | 32.6% | 10.5% |
2020 | 71.0% | 49.6% | 32.5% | 10.4% |
2019 | 70.3% | 48.4% | 32.2% | 10.3% |
男性:60 代後半でも全体の半数以上
では、男女別に就業状況を見ていきましょう。
男性の就業者の割合は、60~64歳で82.7%、65~69歳で60.4%、70~74歳になると41.1%となります。70歳で40%以上とは驚きですね。60歳を過ぎても、半数以上の人が何かして働いていることを見ると、実は働き方を選ばなければ多くの方は仕事につけるのではないかと思ってしまいます。
(男性) | 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75歳以上 |
就業率(①②③の合計) | 82.7% | 60.4% | 41.1% | 16.1% |
①自営業 | 11.3% | 13.5% | 13.4% | 7.6% |
②雇用者 | 61.5% | 38.8% | 21.3% | 5.0% |
③役員 | 9.6% | 7.8% | 6.2% | 3.2% |
女性:60 代前半で60%、後半だと40%
女性の就業者の割合は、60~64歳で60.6%、65~69歳で40.9%、70~74歳で25.1%という結果でした。男性よりかは就業率が落ちるものの、60歳台では約半数の方が働いているようです。
(女性) | 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75歳以上 |
就業率(①②③の合計) | 60.6% | 40.9% | 25.1% | 7.0% |
①自営業 | 6.7% | 7.6% | 6.9% | 7.6% |
②雇用者 | 50.9% | 30.6% | 15.9% | 2.7% |
③役員 | 2.7% | 2.5% | 2.2% | 3.3% |
60歳以上の雇用形態・働き方
では、次に60歳以上の雇用形態についてみていきましょう。正社員なのかアルバイトなのかで、給与や待遇も変わりますからね。気になるところです。令和3年の総務省「労働力調査」の中では、就業者の区分は「自営業主・家族従業者」「役員を除く雇用者」「役員」の3カテゴリーに分かれています。さらに、その「役員を除く雇用者」のうち、「正規の職員・従業員」「パート」「アルバイト」「労働者派遣事務所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」という7カテゴリーにわかれています。今回は男女別に、その「役員を除く雇用者」の7カテゴリーについて大枠を見ていきましょう。
男性:正規の従業員は60-64歳で全体の約3割(役員や自営業を除く)
男性の場合、「役員を除く雇用者」のうち「非正規の職員・従業員(つまり、「パート」「アルバイト」「労働者派遣事務所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」の合計)」の比率は、55~59歳で10.5%と低い数字になっていますが、60~64歳で45.3%、65~69歳で67.8%と、60歳を境に大幅に上昇していることがわかります。「役員や自営業の方々をのぞくと、何かしら働いているいる60歳台の方は、50%前後の方々が正社員で働いている」ということでしょうかね。これの比率を全体の母数に割り戻してみると、以下のような表になります。70~74歳でも全体の5%は正社員として働いているなんて。結構な比率ですね!
(男性) | 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 |
役員を除く雇用者 | 全体の61.5%(100%) | 全体の38.8%(100%) | 全体の21.3%(100%) |
正規の職員・従業員 | 33.4%(54.7%) | 12.5%(32.2%) | 5.5%(26.0%) |
非正規の職員・従業員 | 27.8%(45.3%) | 26.3%(67.8%) | 15.7%(74.0%) |
女性:正規の従業員は60-64歳で全体の約1割(役員や自営業を除く)
さて、女性の雇用形態を同じ視点でみると、「役員を除く雇用者」のうち「非正規の職員・従業員(つまり、「パート」「アルバイト」「労働者派遣事務所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」の合計)」の比率は、55~59歳で59.1%、60~64歳で74.7%、65~69歳で83.9%、70~74歳で83.8%となっています。男性と比べると年を追うごとの上昇幅は小さいですが、男性と同じように60歳を境に非正規の職員・従業員の比率は上昇しているといえるでしょう。全体の母数に割り戻してみると、以下のような表になります。
(女性) | 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 |
役員を除く雇用者 | 全体の50.9%(100%) | 全体の30.6%(100%) | 全体の15.7%(100%) |
正規の職員・従業員 | 12.9%(26.3%) | 4.9%(16.1%) | 2.5%(16.2%) |
非正規の職員・従業員 | 38.0%(74.7%) | 25.7%(83.9%) | 13.2%(83.8%) |
60歳以上の平均給与(男女別)
では、最後に60歳以上の平均給与を男女別でみていきましょう。国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査結果」の令和3年分の報告書によると、10人以上の事業所の場合の、各年代の男女別の平均給与は以下の通りになっています。
驚くことに、男女差があり、これは正社員か非正規かの雇用形態による比率の差も反映されていることでしょう。ちなみに、男性では55~59歳では687万円とすべての年代の中でもピークをこの時期迎えます。そこから60代になると423万円と、ピーク時の50代後半の時の収入から約3割ほど減少します。女性は55~59歳は316万円なので、60歳に入ってからも、男性ほど大きな落差を感じることはなさそうです。
60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | |
全体平均 | 423万円 | 338万円 | 300万円 |
男性 | 537万円 | 423万円 | 369万円 |
女性 | 262万円 | 216万円 | 210万円 |
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。60歳以降も仕事をついているひとはどのくらいいて、毎年の収入はだいだい平均どの程度なのか、イメージが沸いたかと思います。では、ここまで確認してきた就業実態と雇用形態、そして平均収入を以下におさらいしておきますね。60歳になってから慌てて準備をするのではなく、皆さんはぜひ理想のセカンドライフを過ごせるように、事前に準備を始めてみてください。
- 雇用形態(就業率) → 65歳~69歳の就業率は男性は60.4%、女性は40.9%
- 就業形態 → 65歳~69歳の役員と自営業を除く正社員率は男性12.5%、女性4.9%
- 平均収入 →65歳~69歳の平均給与は男性は423万円、女性は216万円
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