定年退職金にも税金がかかるって本当!?知っておきたい税金のルールを完全解説(2022)

定年退職の基本
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セカンドライフのスタートを切るときに、期待が高まる「定年退職金」ですが、平均でどのくらいもらえて、それにどのくらいの税金がかかるのかをご存じでない方は多いと思います。何を隠そう、わたしもその一人でした。

定年退職金を受け取ると、給与や賞与と同じく「所得税」と「住民税」、そして「復興特別所得税(2037年まで)」がそれぞれ発生します。ただし、「退職一時金」または「退職年金」といった退職金の受け取り方によって、所得の区分が変わり、税金の計算方法も違ってくるんです

この記事では、おもに退職金に関わる税金とその計算方法について、国税庁が発表している令和4年時点での最新の情報をもとに、解説していきます。

もし、税金も気になるけどその前に「定年退職金の相場」も知りたいという方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

定年退職金の受け取り方は主に2パターン

まず、税法上、所得は次の10種類に分類されています。「給与・事業・利子・配当・譲渡・不動産・一時・退職・山林・雑」。この中で、退職一時金で受け取る場合は「退職所得」に該当し、「退職年金」で受け取る場合は「雑所得」に区分されます。ここが、すこしややこしいポイントです。この税金の計算をするための入り口なので、しっかり理解をしておきましょう。

パターン①退職一時金として受け取る

さて、上記でもお話ししましたように、退職金を「退職一時金」として受け取る場合は、税法上の「退職所得」と呼ばれる税区分になります。この退職所得はほかの所得と通算されない分離課税です。また、社会人生活の長い間のお仕事に対する卒業祝いとして支払われる性質の収入でもあることから、勤続年数に応じた「退職所得控除」が特別に設けられています。要するに、国はこの所得に対する税金はちょっと負担を軽くしてあげようと設計しているんですね。政府もたまには優しいんですね。

この退職所得にかかる「所得税および復興特別所得税」を計算するためには、まず「(A)課税対象となる退職所得金額」を算出する必要があります。その計算式は以下の通りです。

(A)課税対象となる退職所得金額=(支給される退職一時金総額-B退職所得控除額)×2分の1

すこし複雑ですが、皆さんは会社から支給される退職一時金額はきっとわかるはずです。難しいのは、この退職所得控除額の計算ですよね。この計算を、次に見ていきましょう。

退職所得控除の控除額は、勤続年数に応じて変わることになります。ルールはそこまで複雑ではありません。勤続20年までは年40万円、21年目からは年70万円ずつ退職所得控除が積みあがる仕組みになっています。

(B)退職所得控除額=1+2

勤続年数 退職所得控除額
20年超70万円×(勤続年数-20年)
20年以下40万円×勤続年数
参照:国税庁「退職金と税」より

これでようやく全体像が見えてきましたね。

所得税と住民税、復興特別所得税を計算するための課税対象の退職所得を計算するには、受け取った退職一時金総額からこの退職所得控除額分を差し引いて求めるわけですね。例えば、勤続20年の方だと退職所得控除額は800万円(年間控除額40万円×20年)、勤続30年であれば退職所得控除額は1,500万円(年間控除額40万円×20年+年間控除額70年×10年)といった具合になります。

この退職所得控除額の計算により、会社から支払われる「退職一時金」から「退職所得控除額」を差し引き、「課税対象となる退職所得」が算出されます。

例えば、勤続30年でちょうど1,500万円の退職一時金を受け取ったAさんは、退職所得控除額も1500万円になります。このため、Aさんの課税対象となる退職所得は全額非課税になります。一方で、勤続年数35年で退職一時金2,300万円を受け取ったBさんは、退職所得控除額が1,850万円であり、450万円ほどが課税対象となります。この超えた分の450万円に対して、その1/2である225万円が課税対象となります。この課税対象の退職所得金額である225万円(Bさんの場合)に対して、所得税と住民税、そして復興特別所得税がかかることになります。

所得税、住民税、復興特別所得税の考え方は、退職所得に限らず、給与や事業の場合とほぼ同じ考え方ですね。計算式はそれぞれ以下の通りになります。

(C)退職所得の所得税額=課税対象となる退職所得金額×所得税率-控除額

課税対象となる退職所得金額税率控除額
1,000円〜194万9,000円5%0円
195万円〜329万9,000円10%9万7,500円
330万円〜694万9,000円20%42万7,500円
695万円〜899万9,000円23%63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万円〜3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円〜45%479万6,000円
参照:国税庁「退職金と税」より

(D)復興特別所得税額=退職所得の所得税額×2.1%

(E)退職所得の住民税額=課税対象となる退職所得金額×住民税率10%

では、もう一度、計算の流れを頭からまとめておきますね。ぜひ手元で計算してみてください。

  • 会社から退職金を「退職一時金」というかたちで受け取ると、「退職所得」という税区分になる
  • 退職所得には、「所得税と住民税、復興特別所得税の3つの税金」が発生する
  • この税金を計算するためには、「(A)課税対象の退職所得」を算出する必要がある
  • 課税対象の退職所得は、支給される退職一時金の総額から(B)退職所得控除を引求める
  • (B)退職所得控除は、勤続年数によって変わる
  • 退職所得控除が算出できたら、(A)課税対象の退職所得を「支給される退職一時金額総額-退職所得控除額)×2分の1」の計算式にて求める
  • 算出された「(A)課税対象の退職所得」をもとに、3つの税金(C)所得税(D)復興特別所得税(E)住民税をそれぞれ計算する。
  • 最後に、会社から受け取った「退職一時金」から(C)+(D)+(E)の合計を差し引くと、手元に残る退職金になる。

パターン②退職年金として受け取る

一方で、退職金を一時金として一気に受け取るのではなく、分割して「退職年金」として受け取る場合は、「雑所得」という所得区分になります。退職一時金が分離課税だったのに対して、雑所得はすべての所得と合算して税額を計算する総合課税になります。給与所得など他の所得があれば足し合わせ、基礎控除や社会保険料控除などの各所得控除額を差し引いて課税所得を算出します。

また、少し複雑なのですが、この雑所得にも種類があり、国民年金や厚生年金、退職年金などを総じた「公的年金」にかかる雑所得は、いくつかの条件をあてはめて計算される公的年金等控除額を差し引いて計算することができます。つまり、雑所得金額こちらにも、特別な控除があるんですね。

では、この公的年金等控除額をどのように計算するのかですが、(3)退職年金を受け取る際の年齢(65歳以上か未満か)や(4)公的年金等の収入金額、そして(4)公的年金等以外の収入金額によって変わってきます

(1)課税対象となる雑所得金額=退職年金を含めた公的年金の収入金額-公的年金等控除額

(2)公的年金等控除額=次の条件により細かく設定されている(令和2年以降)

(3)年金を受け取るひとの年齢65歳未満65歳以上
(4)公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額6区分6区分
(5)公的年金等に係る雑所得の金額6区分6区分
参照:国税庁「公的年金等の課税関係」より

例えば、(3)65歳以上、(4)公的年金にかかる雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が500万円、(5)公的年金等に係る雑所得の金額が350万円の場合、控除額は115万円となります(350万円×75%-27万5千円=235万円)。

ただし、何度もお伝えしますが、退職金を年金として受け取ると雑所得扱いになり、これは総合課税となります。そのため毎年分割で受け取る退職金は他の所得とも合算してから課税されることになります。つまり、これらは毎年の社会保険料の計算にも影響します。保険料の負担が増える可能性にも注意してください。

  • 会社から退職金を「退職年金」というかたちで受け取ると、「雑所得」という税区分になる
  • 雑所得は、総合課税のためすべてと合算されてから「所得税と住民税、復興特別所得税の3つの税金」の計算がされる
  • 雑所得にも種類があり、退職年金も含まれる公的年金等による雑所得には、一定のルールに従って計算される「公的年金控除」を差し引くことができる
  • 公的年金等控除額は、退職年金を受け取る際の年齢(65歳以上か未満か)や公的年金等の収入金額、そして公的年金等以外の収入金額によって変わ
  • また、雑所得は総合課税のため、毎年の社会保険料の計算にも影響がある

結局、どっちがお得なの?

結論から申し上げますと「退職金を受け取るひとによります」

一般論としては、退職一時金と退職年金は組み合わせて受け取る人が多いようです。もう少し具体的に申し上げますと、勤続年数と受け取れる退職金額から計算して、退職所得控除額の上限まで「一時金」で受け取り、残りを公的年金等控除の範囲に収まる形で「年金」で受けとるのが、いちばん手取りを増やすことができる(退職金に関わる税金を少なくすることができる)と言われます。

ただし、もう少しワイドな視点でみますと「そもそも、何歳まで働きたいか」「住宅ローン等はどのくらい残っているのか」「病気や親の介護、子供の教育など、近いうちにまとまったお金は必要か」「年金はどれくらい受け取れる予定なのか」など、税金上のメリット以外で受け取り方を決める必要があると言えるひともいることでしょう。

このブログで申し上げているように、お金だけでなく、ご自身やご家族の健康、人間関係や趣味など、色んなものとのバランスを総合的に考えて、ご自身に最適な退職金の受け取り方を決めことをおすすめします。

この記事を書いたひと

現在、夫67歳、妻65歳。定年退職を機に、夫婦で兵庫県の淡路島に移住。セカンドライフに関わるお金、仕事、資格、防犯・ホームセキュリティ、親の介護、資産運用などを実践しながらブログに投稿しています。自分自身で調べたことや聞いたこと、やってみたことを中心に発信します。趣味は、ゴルフ、夫婦で料理、不動産投資、資格の勉強、土いじりです。

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